【NTT体験研修】 NTT(H11.11月〜12月)での社会体験研修の報告書です。


情報通信&ネットワーク最前線!
               福岡市立長丘中学校 教諭 藤井則英
       
       派遣先:NTT西日本福岡支店


はじめに
 以前,教育センターの共同研究で授業公開や全体会をTV会議システムで行う仕事を,NTTの方とご一緒にしたことがありました。そのとき,社員の方が単にインターネット(その当時はパソコン通信がまだ主流でしたが)だけでなく,パソコン全体についての知識も豊富なことを実感しました。私は,「NTTは,情報通信ネットワークの根幹を握っている。また,パソコンやソフトについてもグローバルな考えと知識を持っている。機会があれば,ぜひ行ってみたい。」と思っていました。その,憧れのNTTに社会体験研修が決まり,自分なりに次のような目標をたてました。
 企業内でのインターネットの活用を知る。
  各イベントの企画や運営のノウハウを修得する。  
  LANの基礎知識等を修得する。
 ・社会人との交流を通して企業の厳しさを知る。
 教員ではあじわえない企業での体験を通し,学校を外から見ることで,自分をみつめ直したい。また,この体験から得たものを少しでも,教職員や生徒に還元できればと思い,今回の社会体験研修に臨みました。

研修概要
(1)研修期間 平成11年11月1日(月)〜平成11年12月28日(火)
(2)研修先  西日本電信電話株式会社福岡支店(NTT西日本)
       法人営業本部公共第一担当
(3)研修日程

主な出張先

内容

11月1週

マリンワールド

リハーサル,遠隔授業

2週

北九州市萩ヶ丘小学校,前原市長糸小学校

出前研修

3週

金山小学校,行橋中央公民館

発表会,集合研修

4週

行橋中央公民館,朝倉高校,八田小学校

集合研修,発表会

12月1週

マリンワールド

リハーサル,遠隔授業

2週

泉河内小学校,平尾小学校,麻生教育電子専門学校

出前研修,発表会,講演会

3週

データビル,博多青松高校,能古小学校

社内研修,打合せ

4週

データビル,原中学校,大任町今任小学校

社内研修,出前研修

5週

甘木中学校

出前研修


研修内容

1 情報処理技術者派遣事業
(1)集合研修
 福岡県内の各教育委員会との連携で,NTTの研修所や教育事務所等で教職員対象に行っているパソコン研修です。日時・会場を前もって各学校に通知して,各教育事務所等を通して申し込みます。今回の研修では,次の各会場でLAN入門・応用等のサブ・インストラクターを行いました。
 ●筑豊教育事務所,行橋市中央公民館,NTT「PATIO-Q」
(2)出前研修
 福岡県内の各教育委員会を通して,研修依頼があった各学校に情報処理技術者を派遣し,その学校でパソコン研修を実施するものです。この体験研修中に,朝倉高校,藤ヶ丘小学校,泉河内小学校,能古小学校,原中学校,今任小学校,甘木中学校で次の内容の研修を行いました。
 ●インターネット入門・応用,ホームページ入門,マルチメディア入門,プレゼンテーション資料作成

2 TV会議システムを利用した遠隔授業<海の中道マリンワールド>

(1)11月5日(金)「イルカのトレーナーに挑戦」<画像1>
内容…大水槽でイルカの生態をインストラクターが説明したり,児童が画面を通して「体験トレーナー」をおこなったり,環境汚染についての話を聞いたりする。
参加校…福岡市当仁小学校,北海道稲里小学校,埼玉県梅園小学校
 (2)12月3日(金)「もっと知りたいサメのこと」<画像2,3>
内容…パノラマ大水槽にダイバー(インストラクター)が潜り,サメの生態の説明や,水槽の魚の紹介や,参加校からの質問をうけて回答する。
参加校…福岡市長尾小学校,宮崎市本郷小学校,京都府城陽養護学校

    

画像1-イルカのジャンプ  画像2-ナレーター   画像3-サメとダイバー

3 「こねっと・NEWSレター」の作成

「こねっと」というのは,こどもネット・プランの略です。NTTを中心として,1997年から学校へのマルチメディア環境構築に向けたホームページを運営することを通して,学習の支援を行っているものです。研修中に福岡県内の教職員対象に「こねっと・NEWSレター」の創刊号・2号を担当し,発行しました。

4 研究発表会や講演会等への参加
 11月15日(月)国語科研究会研究授業(金山小学校)
    26日(金)視聴覚教育研究会九州大会(八田小学校)
  12月 9日(木)音楽科研究会研究授業(平尾小学校)
        10日(金)専門学校インターネット協議会講演会(麻生電子専門学校)
        16日(木)NTT社内研修「LAN構築」(ハイパーテクノセンター)
        20日(月)NTT社内研修「ネットワーク・サーバー」(同上)

研修成果

(1)合言葉は「メールで!」「PHSで!」
 朝,出社して最初に行うのがノートパソコンの電源を入れてのメールチェック。社内の連絡事項のほとんどをEメールで行っており,朝のミーティングは短時間で終わります。学校でも,連絡事項はEメール行うことができれば,会議時間の短縮になるのではないか,児童生徒にふれあう時間も増やせるのではないかと感じました。早く教職員がEメールを有効に利用できるような校内LANシステムが導入されないかと思います。また移動することが多いので,緊急な連絡は,各人が持っているPHSで行います。しかも,これを使えば,出張先や研修先で電話回線がなくても,インターネットを利用することができます。

 (2)集合研修を通して
 集合研修は,定員が10名程度で,受講者のスキルにあわせた研修になっています。内容もレベルに応じて,入門研修でも応用の話や,学校のネットワークシステムについての相談も行います。今回,県内の各教育事務所等に同行しましたが,各地区でのインターネットやパソコン教室の状況を知ることができました。どの地区も,情報教育について,熱心に取り組んでいるように感じました。

 (3)交流できる授業 ―遠隔授業―
 TV会議システムを利用すると,双方向のやりとりができるので,これまでのTV番組やビデオ教材と違い,あたかも教室で授業をしているような雰囲気で学習がすすめられます。福岡市内の各公立学校に入っているフェニックス・ミニがあれば,あとはビデオカメラ,TV,コード類さえ準備すると,簡単に利用することができます。いままでに福岡市博物館やマリンワールドが行っていますが,今後いろいろな施設がTV会議システムでの学習を支援していただけるようになれば,小学校はもちろん中学校でも活用できるのではないでしょうか。

 (4)説明はプレゼンテーションソフトで!
 学校では,研究発表会で使っていたプレゼンテーションソフトが,NTTではワープロと同等に日常的に活用されていました。企業においては,商品やイベントについて,イメージを相手に伝えるためにプレゼンテーションソフトが重要な役割を持っています。学校でも,イメージを伝えることができるプレゼンテーションソフトは,子供たちの表現力を伸ばすことができ,豊かな表現力を養うには有効ではないかと感じました。

 (5)これがプロだ!
 通信・音声・画像等を専門にしている技術系の社員が,プロジェクトチームを構成しています。技術的な問題をチームで解決できないときは,他のチームを呼んできても,お客様の要望に答えていく。「最後まであきらめない。そしてなんとかする。」あたりまえのことですが,これがプロの仕事だと感じました。

 (6)研修内容はマルチメディアとインターネット
 以前のパソコン研修は,パソコン操作やワープロや表計算が中心でしたが,現在は,マルチメディア応用・インターネット入門・ホームページ作成に人気があります。これからのパソコン研修は,LAN構築やサーバー管理のような情報管理者を養成する研修や,「総合的な学習の時間」で活用できるマルチメディアやインターネットの研修がもっと必要になってきます。

 (7)企業から見た教職員の姿
 「学校の先生は世間を…。」といわれますが…

 (8)90分の出前研修の限界
 通常2〜3時間の研修内容を,学校の校内研修に合わせて90分(1時間30分)で実施したことがありました。しかし,パソコン操作をしたことがない先生がいたり,個人のホームページを開設している先生もいたりと,同じ学校の教職員でも,パソコンのスキルについてはかなりの差があります。せっかく情報処理技術者を利用して研修を行うのであれば,事前に文字入力程度の校内研修を行ってもよいのではないかと感じました。90分のパソコン研修は,ポイントを絞らないと,聞く方も教える方も満足な研修にならないようです。

 (9)社会人の学校体験研修
 社内にいて,興味深かったことの一つに,NTTの教育担当者が総合教育やインターネットの学校利用を論議していた姿があります。しかも驚いたことに,この論議が的をえており,総合教育に対して共通理解がなされていることでした。このパワーが学校現場に必要だと思います。教員の社会体験研修があるなら,逆に企業人の学校体験研修があってもよいのではと感じました。

 (10)「こねっと・プラン」講演会を聞いて
 講演会の中で,「『自ら考え,豊かな表現力』を自分なりの視点を持つことと考えて,そのためにはどうすればいいか?をつきつめていくと学習の中でのインターネットの活用がみえてくる。決して学校をパソコンスクールにしてはいけない。」と言われていました。この話を聞くと,やはりインターネットは道具であって,有効な活用ができるかどうかは,授業設計の問題のようです。

 (11)結果は数字…
 12月になると,「目標○○件に対し,実績は△△件!目標に向かって努力するように。」との話が多くなってきました。「日頃の活動は,最終的に営業につながっていき,結果は数字として表れる。」というのが企業の基本的な考えです。私たち教職員の『結果』は目にみえるものではありませんが,子供たちが社会に出たあとの生き方や考え方かなと思いました。

 (12)こねっと・NEWSレターを通して
 「教職員対象に発行するから,あなたにまかせる。」の一言で,NEWSレターを企画から行いました。インターネットに関する情報やNTTの各種サービスを分かりやすく説明するのに苦労しましたが,予想以上に紹介した商品の受注があり,感動しました。これを通して,企業の立場から教職員に情報を伝えるという企画の楽しさや難しさ,企画次第で結果が違うことを知りました。また「自分を活かすためには,人を活かす。」という行動原則,PDCSの原則(プラン・ドゥ・チェック・シー)の大切さも知りました。

おわりに
 私たちは,個人の意志とは関係なく,インターネットを含めた電子情報ネットワーク社会の中で生活しています。その技術の進歩はめざましく,日進月歩というより秒進分歩です。特にパソコンの性能をみてもわかるように,年に2〜3回のモデルチェンジがあり,常に新しい機能がついている状況です。学校現場でも,昨年からパソコンを新しく購入する先生も多いのですが,インターネットに関しては,プロバイダの選択や初期設定も必要なためか,もうひとつのようです。
下表からもわかるように,福岡市の小中学校におけるパソコンを操作できる教員・指導できる教員の割合は,全国と比べて高いとはいえません。
                平成11年度文部省調査(%)

校種

操作できる教員

指導できる教員

福岡市

全国平均

福岡市

全国平均

小学校

42.6

52.7

24.8

28.7

中学校

49.4

59.3

19.6

26.1

「これからの高度通信情報社会で生きていく子供たちにとって,インターネットは必要不可欠なものである。その子供たちにインターネットを道具として教えるためには,教職員自身がインターネットの『光と影』を知らなければできない。」と痛感しました。また,文部省の養成と採用・研修との連携の円滑化についての答申に「教員は変化の時代を生きる社会人に必要な資質能力をも十分に兼ね備えていなければならない。」とあります。私自身,もっと授業や研究に研鑚したり,インターネットを広めたりすることを通して,情報の大切さを生徒や教職員に伝えたいと思います。
 最後に,学校においては11〜12月という多忙な時期に研修させていただき,またNTTにおいては,2000年問題を直前にひかえた大変な時期にチームの一員として扱っていただき,感謝の念で一杯です。本当にありがとうございました。