【指導案1】「円周角の定理」

平成9年9月に,福岡県数学研究会の県大会で研究授業を行ったときの指導案です。
単元は,中学校3年生の円で,「円周角の定理」を取り上げています。
参考にされて結構ですが,よかったら感想等をメールでお願いします。

なお,学習プリントはこちら。


              第3学年△組数学科学習指導案  

                                  指導者 福岡市立○○中学校
                                   教諭  藤井 ○○
1 単 元 「円」
2 指導観  
 ○ 円は基本的な図形の1つであり,私たちの身のまわりに,いろいろな分野で数多く
  使われている。また,多角形とは違う回転性や対称性などの性質があり,幼いころか
  ら円に親しんでいる。このような円を数学的な見地からとらえ,円の性質を考察するこ
  とは,円の持つ新たな一面を発見でき,驚きもあり,数学を学習することのおもしろさ
  を味うことにつながり意義深い。
    本単元の指導のねらいは,円の性質についての理解を深め,それらを用いて図形
  の性質を考察することができるようにすることである。学習内容には,円と直線の位置
  関係,円周角の定理,円周角の定理の逆,円に内接する四角形,接線と弦とのつくる
  角などがある。こうした学習をする中で,直観的な扱いや数学的な推論によって,円の
  性質を考察し論証をする喜びを味わうことができる。また,論理的に思考したり表現し
  たりする能力を一層伸ばすことが期待できる。
 ○ 生徒はこれまでに,1学年で「円は平面上で1つの定点から一定の距離にある点の
  集合」としてとらえ,円の弧や弦の用語を学習している。また2学年では,三角形の合
  同条件や相似条件,平行線の性質などを学習し,円の性質の考察に必要な論証の基
  礎を学習している。
   本学級の生徒たちは,円についての基本的な内容は理解している。しかし「図形」を
  他の領域に比べて苦手としている生徒が多い。その理由として,図形の証明が形式的
  なものになりがちで,論証のおもしろさを味わえないことがあげられる。一方,「作図は
  楽しい」「図形の性質を使って,いろいろな問題を解くのはおもしろい」など図形学習の
  よさを感じている生徒もいる。また,操作活動やパソコンのシミュレーションを取り入れ
  学習には,意欲的な姿が多く見られる。
 ○ 指導にあたっては,実測や観察,作図などの操作活動を多く取り入れたり,パソコン
  のシミュレーションを活用したりして,自らが円の性質を発見し,明らかにしていくような
  学習が展開できるように工夫したい。また,図形に対する直観的な見方や考え方と論
  理的に推論することとの関連づけを図る指導を考えていきたい。例えば,円周角の定理,
  接線と弦のつくる角,円に内接する四角形の定理の指導では,これらの性質を導くとき
  に,操作や実験などを通して,あらかじめその結果と方法に見通しをもたせ,演繹的な
  推論の有用性を強く認識できるようにしたい。さらに,シミュレーションを利用し,円周上
  の動点で図形を動的にとらえさせ,連続的に変化する図形の中から,これらの円の性
  質を統一的にみることができるようにしたい。また,単元全体を通して,自由な発想や主
  体的な活動を促し,主体的に問題に取り組む態度を養うと同時に,論証のおもしろさを
  味わわせたい。

3 目 標
 ○ 円の性質の考察に関心を持ち,意欲的に取り組むことができる。
 ○ 円に関する性質を見出し,それを証明したり,定理の相互関係を明らかにしたりす
  ることができる。
 ○ 円に関する定理を的確に用いて,図形の問題に対し見通しを持ち,論理的に考察し,
  解決することができる。
 ○ 円に関する用語・記号や定理を理解し,それを説明することができる。

4 指導計画   20時間

  第1次 円の性質−−−−−7時間
  第2次 円周角−−−−−11時間
        (1)中心角と円周角−−−−6時間(本時1/6)
        (2)円に内接する四角形−−3時間
        (3)接線と弦のつくる角−−−2時間
  第3次 円のまとめ−−−−2時間 

5 本 時 平成9年10月16日(木)第5校時 計画第2次の(1)の1/6 パソコン教室にて
(1) 本時の指導観
  前時までに,2つの円の位置関係,円と直線の関係などを学習している。
  本時では,円周角と中心角の関係を調べ,円周角の定理を予想し,それが正しいこと
  を証明する。その際,実測や作図などの操作活動を取り入れたり,パソコンのシミュレ
  ーションを活用したりして,自ら円周角の定理を発見し,明らかにしていくような学習を
  設定する。学習の流れは次の通りである。@円周角の定義を知る。A円周角や中心
  角を測定し,円周角の定理を予想する。Bパソコンで予想を確かめる。C証明の場合
  分けを考える。D補助線を入れて証明をする。
   Aにおいて,分度器で測定することにより,円周角の定理を予想させる。固定の図
  形では連続的な変化を見ることはできないので,Bにおいて,パソコンの画面上に円
  周角や中心角を作図させる。その図形を生徒自身が測定機能やシミュレーション機能
  を利用させて,動的に変化する様子を調べさせる。その際,円周上の点が連続的に動
  いても円周角の大きさは不変なことや中心角が変化するときの円周角との関係を確認
  させる。Cでは,円周角と中心角の位置関係から,円周角の定理の証明の場合分けを
  考えさせて,3つの場合に絞り込ませる。そしてDでは,どの場合が証明しやすいか 
  を考えさせ,証明させる。その際,補助線をひかせて二等辺三角形をつくらせ,三角
  形の外角の性質や二等辺三角形の性質を利用させる。
(2) 主眼
  ○ 円周角の定理を予想することができる。
  ○ 円周角と中心角の位置関係を3つの場合に分け,円周角の定理を証明することが
   できる。
(3) 準備  @学習プリント A分度器 BパソコンC学習ソフト…図形ランチボックスVer2(創育)