MainichiINTERACTIVE

授業の実践紹介教育

▲授業の実践紹介トップへ

■水族館で比例・反比例を学ぶ
福岡市立長丘中学校  藤井則英先生(現・福岡市立金武中学校)
 学年 中学1年
 学科 数学 「比例反比例の利用」

イルカを見ながら桑野解説員の説明を聞く長丘中の生徒たち
 生徒が知ろう、学ぼうという気持ちをどうやって育てるか。動機付けは先生たちの大きな関心事だ。ことに数学のように抽象概念を扱う勉強では、生徒はなぜ学ぶのか、学んだことが生活の中でどう生きるのかを把握するのは簡単ではない。藤井先生の授業でも、生徒はすでに比例や反比例のグラフの作成や計算は学んでいる。「でも、実際に社会で使われているという意識はない。数学の中でも生徒の関心がやや低い単元です。彼らの意識を変えたかった」と藤井先生は話す。
 
 生きた「比例・反比例」を実感させるのに、水族館や博物館の素材を使えたら、生徒の興味は高まるのではないか。博物館に問い合わせてみたが、博物館の展示品には動くものが少なく、関心を引きにくい。生き物のいる水族館の方が生徒は興味を持つのではないか。市内にある「海の中道海洋生態科学館」(マリンワールド海の中道)学芸員の岩田知彦さんが協力してくれることになり、1年生の数学で、学校と水族館を結んだ遠隔授業が実現した。

 水族館と教室をテレビ電話でつなぎ、テレビ電話の画像をプロジェクターで教室のスクリーンに映した。水族館では岩田さんが機器を操作し、トレーナーの桑野裕子さんが館内を案内した。桑野さんがイルカプールの前でイルカ3頭を紹介し、「体重はどれくらいあると思いますか?」と3択クイズを出した。選択肢のそれぞれに生徒の手が上がる。

 「バンドウイルカのハッピーは体重が240キログラムあって、毎日12キログラムのえさをやっています」。ハッピーが体重計に乗るビデオ映像を見せながら、桑野さんが正解を示す。いよいよ本題に入っていく。生徒は画面に集中している。桑野さんはさらに、360キログラムのイルカなら、えさの量は18キログラム、ハッピーが240キログラムで12キロ、小さな子供のイルカが120キログラムで6キロと数字を示した。

 3組の数字にどんな関係があるのか。比例の勉強が始まった。生徒はまず「体重が増える割合と同じ割合でえさの量も増える」などと予想をたて、表やグラフをつくって予想を確かめる。そこで、えさの量が体重の20分の1に当たるということに気付く。さらに、それまでの学習を思い出しながら、体重をX、えさの量をYとして「Y=0・05X」という式にたどりついた。1クラス35人中の約3分の2の生徒が、イルカの体重とえさの量が「比例」の関係にあると予想できた。
 
 授業はチーム・ティーチング方式で、予想できない生徒には補助教員が「Xが2倍、3倍…になれば、Yも2倍、3倍になる→→比例」と書いたヒントの紙を見せた。
 
 その後、桑野さんが「イルカには体重の5%のえさを与えます。体重とえさの量は比例の関係になっていますね」とまとめた。
 
 続いて桑野さんが反比例の事例を示した。同じ大きさの水槽が3つ並んでいるコーナーに移動し、「この水槽は同じ大きさですが、中の魚の数は違いますね。なぜでしょう」と生徒に問いかける。「1トンの容量の水槽では、体重2500グラムのハタは2匹飼うことができる。同じ容量の水槽では、体重500グラムのウツボなら10匹、100グラムのクマノミは50匹飼育できる」という説明を受けて生徒は、それらの数字の間にはどんな関係が成り立つのかを考えた。
 
 生徒が答えを考えたところで、桑野さんが「同じ種類の魚を1つの水槽で飼う場合、何匹入れるかは、魚の体重によって決まる。浄化の関係で、マリンワールド海の中道では水槽1トンあたり5000グラムの魚を飼育できる。体重が小さければたくさん飼えるが、大きければ飼える数は減る」と答えを示した。実際のものを素材にした問いは、生徒も考えやすいようで、「反比例の関係」を予想できなかった生徒はほとんどいなかった。
 
 藤井先生は授業の前後にアンケートを実施し、生徒に「比例・反比例」が生活の役に立つと思うかどうかを聞いた。授業前のアンケートでは「役に立つかどうかわからない」と答えた生徒が7割、「水族館で比例・反比例が利用されているかどうかわからない」生徒も7割いたが、授業後には「役に立っている」という答えが5割に増え、「水族館で比例・反比例が利用されていると感じた」生徒は9割になった。
  
【利用した機材】
    テレビ電話(フェニックス・ミニ)、ISDN回線、プロジェクター


「朝どく」で読解力養う
イラク戦争、どう教える?
デジタル機器を駆使して学習発表
「My季節暦」をつくろう
水族館で比例・反比例を学ぶ
年間を通じて特養ホームと交流
デジカメスピーチ 小学校1年生に話す力をつけるためのデジタルカメラ活用
デジカメ画像を“映画”にする超簡単技術
耐寒訓練で育てるたくましく生きる力
最新ニュース
8月7月5月  >4月
情報パケット 授業の実践紹介 受験・入試 小学生新聞 中学生新聞 高校生のページ 小中学生新聞を読むには
教育の森 Eラーニング 毎日教育メール MAINICHI Weekly 月刊ニュースがわかる   毎日新聞社のイベント

| Home | 毎日の視点 | アジアの目 | くらし・娯楽 | 教育 | ウーマン | スポーツ | 芸能 | DIGITAL |


MainichiINTERACTIVE

Copyright 2002-2003 THE MAINICHI NEWSPAPERS.All rights reserved.
毎日インタラクティブに掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権は毎日新聞社またはその情報提供者に属します。